第2章 青林檎@及川徹
それからの桐谷さんは、以前とは少し違った。色々な女子と打ち解けるようになって、彼女の良さが見えた。優しくて、気配り上手で、自分の意志をちゃんと持っている。そんな子だと、初めて知った。
…だから俺は、桐谷美心に恋をした。
今は『桐谷さん』としか呼べないけれど、いつか『美心』と呼ばせて欲しい。
彼女と話した事さえ無いけれど、あの笑顔を独り占めしたい。
そう、想うようになっていた。
「勇気だせよな、俺…」
初めて声を掛けるのだ。どんな風に何を言おうか、迷うに決まっている。
深呼吸ひとつ。よし、まずは挨拶だ。
ちらりと桐谷さんを盗み見ると、彼女も扉の前で深呼吸をしていた。モジモジとステップを踏む足、握ったり組んだりと落ち着かない手。そして、いつもと違う表情。
どうやら彼女は緊張しているらしい。
「なんだ、俺と一緒」
何に対してかは分からないけど、俺はそう呟いた。
まぁいいや。まずは、君に顔を覚えてもらわないとね。
「あれ?桐谷さん!」