第5章 失われた恋の行方@菅原孝支
「あーあ、ほんと懐かしい!」
「だべ?俺もよくやったなぁ、これ」
菅原は空を見上げる。…10年以上前の、まだ幼かったあの頃。
恋が、こんなにも苦しくて切ないものだとは、全く知らなかった頃。
戻りたいとは思わないが、あの頃は何も知らなかったんだろうなぁと思うと、自分は成長したんだな、なんて、菅原は改めて感じた。
「…ってか、男子って普通やんなくない?こういうのは女子同士でやるもんじゃん?」
「そうかな?俺はよく女子とやってたけど」
…その時、美心は何かがフッと落ちていく感覚がした。
「…美心?どうした?」
急に黙ってしまった美心を見て、菅原は心配そうな声を上げる。
黙りこくる美心の表情を伺おうと、彼女のサラサラの前髪を指で退けた。