第4章 君のぬくもり@影山飛雄
受験。
それは、青春時代には避けて通れない壁である。
「ってか、飛雄が勉強しようとか言うなんて初めてじゃない?」
「そうかもな」
故に、正に今受験生である影山飛雄と桐谷美心も、その壁に立ち向かっていた。
「白鳥沢から推薦来てねぇし、一般受験しかないだろ。バレーの為だ」
「とーか言って、実は彼女を家に上げる為の口実だったりして〜」
此処は影山の部屋。美心は、あの白鳥沢を受けようと奮闘する影山の為にノートまで作り、勉強を教えている。
何しろ…今の影山の成績では、絶望的どころか受ける資格も無いほどなのだ。
美心としては、教える度に彼氏の部屋に上がれるので嬉しいのだが、志望校は白鳥沢では無いので少し寂しかったりもする。
そんな美心の気持ちに気付いてか否か、影山はこう答えた。
「まぁ、それもある」
「マジか」
「ノルマ達成したらご褒美くれよ」
「…達成したら、ね」
美心は渋々答え、真面目に方程式を解く影山の後ろで漫画を読み始めた。先生は暇なのである。
「…美心はどこ受けるんだっけ」
影山は手を止め、ノートに目を向けたままそう訊いた。どうやら、分からない問題に差し掛かったらしい。
「烏野」
「…そこも考えてんだわ、俺」
「そーいやなんか言ってたね」
美心は漫画を置き、立ち上がる。
「白鳥沢もいいけど…烏野だって強豪校だったし。受かったら其処のマネージャーやろうと思う。バレー部のね」
「…烏野だけは受かるようにする」
「え?」
シャーペンが再び動き出した。