第20章 甘えたさん@孤爪研磨
午前中は部活があった。
土曜日だから、と美心を家に誘っていたのに。
なのに、練習が入ってしまった。急なことだった。春高の予選も近いし、休むわけにもいかない。
最近はバレーばかりで、美心と一緒に居られないことが多い。帰り道、休日、それまで共に過ごしていた時間がどんどん減っている。
申し訳ないと思う。
なのに、美心は「大丈夫だよ」と言う。
「ゆっくり休んで」と笑顔で言う。
気を使ってくれている。それが分かって、それに甘えて、その笑顔でなんとか頑張ってきたけど、
…限界。美心が足りない。
「美心…」
休憩中、君の名前を呟いてみた。
…だからといって、会えるわけではないけれど。
部活は午前中で終わる。今日は自主練の付き合いも程々にして、早く帰ろう。早く美心に会いたい。
柄にもなくそんなことばかり考える。クロが何か言っているけど、頭に入ってこない。ああ、早く抱きしめたい。
美心に会いたい。