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青春メモリアル【短編集】

第19章 月頼み@岩泉一




「ハァ…なんか、凄かったな」

「うん。なんか今の若い子は凄いよね」

「言ってることがババアだぞ」

「はぁ、それが彼女に言うことですかー⁉︎」

「へーへー」

「聞いてないし…」


やがて屋台の並びを抜け、人影の少ない場所に出た。
美心はふと空を見上げ、深呼吸した。


スー、ハァー


夜のひんやりとした空気が胸に染み込む。

空に浮かぶ月が、今日も優しい光を私達に与えている。


「…はじめちゃん、分かったよ」

「何がだ?」


誰にも邪魔されない、2人の時間。


「月は物事の深みを表す、ってやつ」

「あー…」

岩泉も空を見上げ、同じように深呼吸した。


スー、ハァー


「こう…心がスゥって浄化されていくような感じ」

「ん、あるよな、分かるわ」

「うん。…なんだか、涙が出そうだ」


美心は月に向かって微笑んだ。


2匹の兎は今宵も餅をついている。
夏も終わりに近づいていた。



「——次、どうする?」

「ん、じゃあ焼きそば食う」

「お、いいね!」



また来年、再来年の月が照らす頃に、


あなたの隣で笑っていられますように。




fin


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