第19章 月頼み@岩泉一
月は物事の深みを表す。
「…が、いまいちピンと来ない」
美心はそう話し、片手のりんご飴を舌先でつついた。
今宵は満月。白く光るそれが、美心と岩泉を微かに照らしている。
「…ふーん」
「え、何その反応」
「ふーん」
「話聞いてた?聞いてないよね⁉︎」
正に今は月の出る時刻。9月上旬、午後7時頃。
夜空に輝く星屑に劣らず、白く眩しい光を放つ満月。
なんとなく、これが“深い”ってことなのかな、っていうのは分かるの。
でも、直接繋がんないっていうか…ピンと来ない。
美心は岩泉の手を握り、そう説明した。
岩泉は相変わらずイカの丸焼きを食らっている。
まともに話を聞いていない。
まぁいっか、こうなればもうだめだ、と美心。そして、思い出したように繋いだ彼の手をぶんぶんと振った。