第3章 冒険へ行こう
おそ松「ねーねー、マスター。ちょっと部屋貸してくんない?」
おそ松さんは、まだ私を姫抱きしたまま隠れ酒場に入っていくせいで、周りから冷やかしの声が聞こえてくる。
「お、降ろしてください!」
おそ松「あっはははー、やっぱ可愛いねぇ」
おそ松さんは、さっきとは違ってだらしなく笑ってる。
そのせいで、ちょこっとだけ話しやすい雰囲気かも。
男の人って、表情や雰囲気がコロコロ変わるよね?
トッティだって、時々男の人だなぁ~ってわかる顔つきになるし。
女の人も、異性の前だとこんな表情になるのかなー?
「あぁ、いいけど珍しいねぇ。女運の無かったお前さんが、可愛い子連れちゃって」
おそ松「えへへへ~、なんていうかー、運が向いてきたっていうかー?」
「あの、私はトッティの……」
その時、言葉に詰まった。
トッティとは、その……、えっちしちゃったし、告白だってされたし、抱きしめられて幸せだなって思ったし。
これって、十分付き合ってる証拠じゃない?
でも、私から返事してないし、勝手に彼女を名乗っていいのかわからない。
おそ松「まぁまぁ、そんな事はいいから、部屋貸してくれよ」
おそ松さんが話の流れを変えたから、深く追求されなかったけど、トッティと二人っきりになったらきちんと答えを出そう。
「一番いい部屋用意しとくぜー」
そして、私たちは酒場のお姉さんに案内され部屋に来た。もちろん、部屋に行く前に私は自由の身になってる。
ずっとお姫様抱っこされてるのは、流石に辛かったしね。
おそ松「――なー、トトコちゃん」
「はい、お兄さん?」
音を立てて扉が締まる。
用は何だろう? くらいしか考えず、後ろを振り向いた。
すると、そこには静かに笑ってるおそ松さんが。
おそ松「トド松と、どういう関係?」
笑顔を貼り付けたように笑うおそ松さん。
ややや、やっぱり可愛い弟に悪い虫がついたって怒ってるよね?
あの場できちんと彼女ですって宣言できなかったから。
「ご、ごめんなさい! 告白されてまだ返事してないだけで、きちんと付き合うので、今回だけは……!!」
謝るように、両手を合わせてポーズを取る。
今の私には、これしかできない!