第2章 初期刀 山姥切国広
修司は初期刀の山姥切国広を顕現してから数日、何をするでもなく本丸の庭を眺めて過ごしていた。
まともに会話したのは初対面で名乗り合った時くらいで、山姥切が話しかけても、必要最低限の答えしか返って来ない。視線が絡み合うこともなく、山姥切なりに考えて話しかけていた話題も遂に途絶え、二人しか居ない本丸には静寂が訪れた。
山姥切は自分が写しだから主のやる気が出ないのではないかと酷く落ち込んでいた。
それが起こったのは、お互いに干渉し合わない日々がちょうど3日過ぎたときだった。日の出と共に起きてきた山姥切が、縁側に倒れている修司を見つけたのは。
「主!!」
抱え起こした修司の顔は、白を通り越して青いくらい悪く、呼吸もか細い。人の身体に慣れていない山姥切にも、修司の容態の悪さが伺えた。
「主!どうしたんだ!起きろ!」
少し乱暴に揺すったところで、修司は呻き声を上げてゆっくり目を開けた。その漆黒の瞳の色力の無さに、山姥切は内心ますます焦る。
「やまんば、ぎり……、ごめ…ん」
「何を言っているんだ、俺はどうすればいい」
「おな、か……すいた」
「はぁ!?」
山姥切が素っ頓狂な声を上げたところで、修司はまた瞳を閉じてしまう。自分が何も食せずとも困らない身体であるから気がつかなかったが、思い起こせば、自分を呼び出してから修司が食事を摂っているのを山姥切は見たことがなかった。
「馬鹿じゃないのか」
座布団を枕にして修司を寝かせる。
何か食べ物を修司の腹に放り込まなければならないことは分かったが、料理など一切したことがない山姥切は一生懸命刀だった頃の記憶を呼び起こし前の主が病床で食べていた粥を作ってみようと台所に立った。