第4章 デート(仮)
「つっかれたぁ…」
カフェのアルバイトではあるが、平日なのに何故か今日はとても忙しかった。
バイトで盛大に疲れてしまったので、家でご飯を食べる気にもならならず、どこかで軽く食べてから帰ろうかと考えた。それか、よく頑張りましたってことで、自分にご褒美と称して前から行きたかったおしゃれなカフェに行くか。でも、あのおしゃれなカフェにはリア充が集まる場所となっているようなもの。そんな中、私一人で参戦するのはきついものがあるし、さすがの私にもプライドというものがある。
…仕方ない、ハンバーガーでも食べて帰ろう。
そう決めて、家に帰る途中にあるハンバーガーチェーン店に寄ろうとしたら、見知った人影を見つけた。
「あれ、もしかして一松…?」
もしかして、ではなく、あの紫のつなぎにあの猫背といったら一松しかいない。路地裏に入っていこうとしていた一松に声をかけると、面白いほどに一松の肩が飛び跳ねた。
「…瑠璃」
「なにしてるの?」
「い、いや…別になにも…」
「どうせ猫にご飯あげに来たんでしょ?」
「…わかってるんなら聞かないでよ」
そう言って一松はムスッとしてしまった。一松がネガティブでМな男になってしまったときは、どのように接したらいいのか迷っていたときがあったが、今まで通りでいいんだなとわかったのがつい最近。今まで通り、幼馴染として喋っていたら一松も昔のように喋ってくれる。
「瑠璃は?なにしてたの、バイト?」
「うん、さっきバイト終わって今からそこのハンバーガーでも食べて帰ろうかと思って」
「ふ~ん…」
一松は至極興味なさそうだった。わかっていたことだけど、やはり人間の私よりも猫。わかっていたけれど、いつものことだけど少し悲しい。
「…ねぇ一松」
「なに」
「私も猫見に行っていい?」
「え、嫌だ。猫が逃げる」
「……」
一松がさらりと言ったことは、ごもっともだった。たしかに、頑張って懐かせてきたのに私のような、新参者がいきなり行くと猫たちも警戒してしまうに違いない。仕方ない、一人寂しくハンバーガーでも食べに行こう。