第4章 インターハイ予選。
青城5-烏野3のとに、早くも青城がタイムアウトをとった。1セット目のまだ序盤なのにタイムアウトを使ってしまうとは…
『イヤな予感するなぁ…』
「朱里ちゃん?」
唇を噛んでコートを見つめる私を、嶋田さんが心配そうに覗き込んだ。
『このタイミングでタイムアウトってことは…翔ちゃんの速攻を見破られた可能性が高いです』
それにしても…早すぎる。
いくら青城が優れたチームであったとして、いくら徹さんが優秀なセッターだからといって、これは無い。
実を言うと翔ちゃんの速攻は2パターンあって、本人に自覚があるかは知らないが、掛け声が違ってくるのだ。
翔ちゃんと影山くんにしか出来ない"変人速攻"のときには"こい"。誰でも出来る普通の速攻のときは"くれ"。翔ちゃんの掛け声に入っているワードが違うのだ。翔ちゃんは考えずに感覚だけだと思うけど…←
それを見破る、というか聞き破られた?のだったら、翔ちゃんのスパイクの決定率はたぶん、減る。
そして思った通り、タイムアウト明けから翔ちゃんのスパイクがブロックに引っ掛かるようになった。咄嗟にぺちっ、と弾くものの気持ちよく決まらない。
スパイカーにとってそれはフラストレーションとして蓄積されていくものであって。
スパイカー以上に神経をすり減らすのがセッター。指先に神経を集中させ、判断力が必要、試合中に誰よりも多くボールに触れるその役目の苦労は計り知れないだろう。
そして、焦りが募った影山くんのツーは、徹さんに止められてしまった。