第3章 日常①。
兄さんは笑い続け、しまいには涙まで流していた。いわゆる、笑い泣きだ。
「あははっ、おかしい、ちょっと待って…」
兄さんは一頻り笑ってそれからにっこりと微笑んだ。
「ありがとな、アカリ。アカリの気持ちを伝えてくれて嬉しい。でも"こんな私"なんて言うなよな。アカリは俺の自慢の妹なんだからさ」
兄さんがそんな風に思っていたなんて知らなかった。というか、初耳だ。
「アカリはアカリ、それ以外の何者でもないんだからな。なんでもいいから、困ったことあったらいつでも言えよ?俺でよければ力になるからな!」
兄さんはぱちっと効果音付きのウィンクをした。うん、見なかったことにしよう。
「そんなわけで排球部のみんな、これからもアカリのことヨロシクな!」
くるりと振り向いた兄さんはそう言った。私もつられて恐る恐る振り返る。目には入ったのはニヤニヤするみんなだった。
しまった…いるんだった。
「いえいえ、お構いなく。お世話になっているのはこっちですから」
「朱里もちゃんとバレー部の仲間だべ」
「うん、そうだな!」
苦笑いで言うのは3年生ズ。
「お兄さん、俺たちに任せてください!」
「朱里はスゲー気が利くんです!」
田中先輩と西谷先輩。
「アカリは俺の大事ないとこだ!」
「またサーブの特訓付き合えよ」
「………」
「ツッキー何か言ってよ!」
翔ちゃんに影山くん、月島くんと山口くん。
『みんなぁ…グスッ…ありがとうっ!』
若干涙混じりの声で私はお礼を言った。私はちゃーんとバレー部の仲間だったんだね。
アットホームな雰囲気の中、私たちはあたたかい気持ちを抱いてそれぞれの帰路に着いたのだった。