第15章 夏休み合宿~最終日~。
試合は進み、接戦が繰り広げられる。旭さんのスパイクを木葉さんが拾ったけど、スパイクレシーブは乱れた。っていうかあのスパイク上げる!?
それでも京治さんは強気で速攻を使ってくるみたいで、木兎さんが、踏み切りのモーションに入っている。
土壇場で胆が据わってるのも、2年生で副主将になった所以だったりするのかな。繊細なトスを上げるその姿に、きゅんと胸が鳴る。
「だーれを見てんだよ」
『っで!』
ドス、と頭に降るチョップ。見上げれば、ふて腐れたようなクロ。
「お前は俺だけ見てろ、良いな?」
『善処しまーす』
「絶対しないだろ、それ」
『ハイハイ。今は試合に集中、ね?』
「へーい」
試合に戻りますと、前衛が旭さん、蛍くん、飛雄くんという一番"高い"ローテ。この三枚ならどシャットだなぁ。そう思った次の瞬間、超絶インナースパイクが炸裂!
木兎さんはブロックの更に内側、アタックラインギリギリ手前へ強打の決めたのです!
『木兎さーん、ナイスキー!』
「まぐれだけど!!!」
思わず声を掛けると、ニカッという笑顔と共にそんな言葉が返ってきた。まぐれでもあのスパイクを打てるなんて、すごいや!
今のスパイクに、みんなが触発されてる。田中先輩も旭さんも、目を輝かせている。翔ちゃんも頬を紅潮させて、興奮気味に騒ぐ。
『木兎さんって、すごいね…』
「あ?」
『だってさ、敵なのにカッコいい。敵味方関係無く、士気を高めちゃうんだよ?』
隣のクロに話し掛ける。今の私も、きっと翔ちゃんみたいな感じなんだろうな。
「まぁ、称賛を送りたくなるプレイヤーってとこには共感するな」
『でしょ!?』
こんなハイレベルな選手と闘えるなんて。コートにいる訳じゃない、加えて敵。それでも、私たちは木兎さんに魅せられるのでした。