第11章 夏休み合宿~二日目~。
『よいっしょ!』
今度はドリンクのボトルが大量に入ったカゴを持って、廊下を歩く。廊下の天井の蛍光灯の周りには、蛾やら羽虫やらが飛び交っている。ふと空を見上げると、煌々と輝く月。
『山口くん、どうしたかな…』
月を見上げ、そんなことを思った。
第三体育館では、クロたちが練習してるんだろうな。ドリンクとタオルくらい持っていってあげよう。そう思った私は、運び途中のカゴからドリンクを五本、棚からタオルを五枚持って、別のカゴに突っ込んだ。
いざ、第三体育館に向かおうとすると、渡り廊下に誰かの叫び声が響き渡った。
「ヅッギィィィィィィ!!!」
一瞬びくりと肩を震わせ、それから辺りを見回した。なんだったんだろう…
気になったので声のした方に向かうと、蛍くんのまあ胸倉を掴んで怒鳴る、山口くんがいた。
「―――プライド以外に何が要るんだ!!」
よかった、山口くん。
言いたいこと、言えたんだね。
私は一人微笑んでUターンした。私が出るまでもなかったかな。後は自分たちでどうにかするでしょ。
そして私はマネージャーの部屋へと戻って、ぐっすり眠ったのでした。ドリンクとタオルの入ったカゴの存在を忘れて…