第10章 夏休み合宿~一日目~。
ガンガンスパイクを打ってくる木兎さん。疲れているだろうけど、全然ブレてない。バチッと蛍くんのブロックを弾き飛ばした。
あ、ちなみにリエーフは後ろでぶっ倒れてるよ。てかどんだけクロにしごかれてんのよ。
「なら、二枚でどーだ!」
蛍くんにストレートをきっちりしめておくよう指示を出し、ジャンプのタイミングを測る。
木兎さんが腕を大きく振りかぶった瞬間、クロが木兎さんの右側ににゅっと手を伸ばした。そしてボールは梟チームのコートに落ちた。
「うぇーい!」
『クロ、カッコよかったのに、今の一言でカッコよくなくなったよ』
「うわ、ひでえ」
口では文句を言いながらも、クロは笑顔。そして、木兎さんは蛍くんにアドバイスをしている。
「うーん、やっぱメガネ君さ、"読み"はいいんだけどこう…弱々しいんだよな。腕とかポッキリ折れそうで心配になる。ガッ!と止めないとガッ!と」
素直というか、ストレートというか、木兎さんの指摘に少なからず思うところがあったのか、蛍くんはイラッとしている。
「悠長なこと言ってると、あのチビちゃんにいいトコ全部持ってかれんじゃねーの」
ニヤニヤしながらからかうクロに、蛍くんは一拍遅れて答えた。
「それは仕方ないんじゃないですかね~。日向と僕じゃ元々の才能が違いますからね~」
笑顔で言う蛍くんに、一同唖然。
と、誰かが言葉を発する前に、どやどやと第三体育館に人がなだれ込んできた。
「おいリエーフ!レシーブ練習だぞ!」
「げぇ、夜久さん!」
「リエーフだけずりーぞ!」
『あ、走!福永さんも!』
夜久さんを先頭に、走と福永さんが体育館にやって来た。
「じゃ、僕はお役ご免っぽいんで」
最後まで笑顔を崩さずに、蛍くんは体育館から去っていった。
「黒尾さん地雷踏みましたね」
「いやぁ…だってそうだろ。身長も頭脳も持ち合わせているメガネ君が、チビちゃんをライバルどころか敵わない存在として見てるなんて」
思わないだろ、と同意を求めるクロに、私は何も言えなかった。
蛍くんはバレーに熱中することに、どこか引け目を感じているように見える。というか、これ以上はやらないって境界線を、自分から引いてるみたいな。
リエーフたちの喧騒でうやむやになったけど、蛍くんのことが気になって、その後はあんまり集中出来なかった。
