第2章 音駒の彼ら。
私が正式に烏野高校男子排球部のマネージャーになってから一週間弱。練習の雰囲気にもだいぶ馴染んできた頃。
それは唐突にやって来た。
「烏養くんの計らいで、東京の音駒高校との練習試合が決まりました」
『ふぇっ、音駒!?』
顧問の武田先生の一言に、私は目を見開いた。それに、変な声を出したせいでみんなの視線が刺さる。
「アカリ知ってんのか?」
ワクワク顔で訊ねてくる翔ちゃんに私は曖昧に笑った。
『知ってるか、って言われたらそうなのかな。東京にいた頃の知り合いが音駒高校に通ってるから』
部のメンバーからもへぇー、と声が漏れる。そして、翔ちゃんは尚も訊いてきた。
「その知り合いって、バレーやってる!?」
『えーっとねぇ…小学生からやってる。私がバレーやり出したのってその知り合いの影響なんだよね。言ってみれば私の師匠かな。ブロックが上手なんだ、その人』
おおーっ!と翔ちゃんは目をキュピーンと効果音がしそうな感じに輝かせた。
「アカリの師匠!?会いてー!」
「うっせぇ日向ボゲェ!」
「そこの二人の方が煩いデショ」
「んだとゴラァ!?」
「はいはい。落ち着けー」
騒ぐ1年生ズをスガさんが宥める。いつもの光景だったのに、どこか上の空だった私はその煩ささえ気にならなかった。