第6章 恐怖の期末テスト。
部活が終わってもう7時を過ぎているのに、日は沈みきってないし、明るい。靴を履き替えて自転車を取りに向かうと、そこには今一番会いたくない人がいた。
『あ、蛍くん…』
「やっと来た」
私に気づくと、蛍くんはゆっくりと近づいてきた。さっきのことがあるから、ちょっと警戒して一歩下がった。
そんな私の様子に気づいたのか、蛍くんはニヤリと口角を上げた。
「何怯えてるの?」
『違いますー、警戒してるんですー』
「まあ、今更遅いケド」
そう言うと、蛍くんは不意に真剣な顔をした。
「さっきの意味…わかってる?」
『"さっきの"って…』
「部室でキスしたやつ」
『いっ言わなくてもいいっ///』
唇に触れた蛍くんの温度を思い出して、恥ずかしくなって俯いた。
「僕さ、けっこう本気なんだよね、アレ」
『えっ…』
「だからさ、考えてみてよ―」
そして、蛍くんは耳元で小さく呟いた。目を丸くする私の頭を、ポンポンと優しく叩くと、じゃあね、と何事もなかったかのようにいなくなってしまった。
さっき蛍くんに言われた言葉、薄々勘づいてた。だって普通、好きでもない人にキスなんてしないから。
半ば放心状態で家に帰った私は、心配して声をかける兄さんをよそに、フラフラとベッドに倒れ込んだ。
蛍くんの言葉が、耳から、頭から離れなかった。
"相手がいないならさ、僕と、付き合ってよ"