第5章 日常②。
『影山くんっ!』
「悪い、遅くなった」
そう言った影山くんは、走ってきたのか額にうっすらと汗が浮かんでいる。それに、息が少し荒かった。
徹さんは腕をくんで観察でもするかのように、影山くんに正面から向き合った。影山くんも負けじと対峙する。
「ふぅん、なるほどね」
『なにがですか?』
徹さんがやけに神妙な顔で呟いたので、気になってつい、訊いてしまった。直後、後悔するとも知らずに…
今日一番の爽やかスマイルで、徹さんはとてつもない爆弾を落とした。
「朱里ちゃんの彼氏って、やっぱりトビオちゃんだったんだ~!」
「『違いますっ///』」
私と影山くんの否定の言葉が見事にハモった。それに気をよくしたのか、徹さんは意地の悪~い顔でニヤニヤしながらなおも訊いてくる。
「あれあれ~?二人とも顔が真っ赤だよ?」
「それはっ、暑いからッスね…」
『きっ、今日は珍しく晴れてるからね!』
「二人は付き合ってるんじゃ…」
『ないです!ただの部員とマネージャーの関係ですから、お間違いなく!』
「んなわけないです!」
「そっか、なら…俺がもらってもいい?」
「「「「『!?!?』」」」」
恐らく、その場にいた全員が驚いただろう。言った本人はいたって普通の顔をしているのだが、周りへの影響力がはんぱない。
徹さん、おかしいよ、確実に。たぶん全人類の中で一番おかしいんじゃないかな←
「やっぱ嘘です。こいつ、俺の彼女です」
「「「「なっ…!?!?」」」」
『影山くん!?』
違います、違いました、前言撤回です。
影山くんのがおかしいです。
誰か!この状況を説明してください!