第10章 【番外編】副船長の過去
一味の先頭より、先。
少し敵に近い位置でペンギンは内ポケットから細い横笛を取り出した。
ペ)「全員耳塞げ」
仲間に向かってそう言うと敵を見据え、息を吸い込み、笛を構えると吸っていた息を歌口に吹きかける。
音は
敵1)「……あ?」
ならない。
敵2)「なんだ?あれは武器じゃねぇのか?」
ペンギンは何もすることなく、口元から離した笛をくるくると手先で遊ぶ。
敵3)「どうした、見かけ騙しか?
笛吹きたいなら演奏団にでも入っとけ!
やっちまえ!」
その声を引き金に、立ち止まっていた敵が攻めてくる。
その様子に口角を僅かに上げると笛を構えて今度こそ音を奏でた。
辺りが静まり返る。
誰もが聞き入った。
…そうとも言えるかもしれない。
しかし現実は
ペ)「構えろ」
…程遠い。
敵は持っていた武器をお互いに向けあう。
敵2)「おいなんでこっちに…!?」
敵3)「うるせぇこっちのセリフだ!!!
お前こそ銃降ろせよ!!」
敵1)「体が勝手に……!!」
喧騒が始まり、それを見ていたペンギンは仲間に合図を出すとローを始め、一味全員が耳につけていた耳栓を外す。
ロ)「手ェ空いてる奴は向こうの船から荷物取って来い。
他は出航の準備だ。」
べ)「あいあいキャプテン!」
ハートの一味はローの指示を聞き、敵の海賊団など見向きもせず着々と荷物を積んでいく。
敵4)「くそ!!トラファルガー!!!
こんな汚ねえ真似があるかよ!
ぶっ殺すぞ!!!」
ロ)「…うっせぇな」
敵3)「あぁ?!」
ロ)「おい、ペンギン。
…いつまで生かしてる。早く片付けて出航するぞ」
ペ)「了解」
敵1)「なっ!待___________」
ペ)「殺せ」
ペンギンの一言で銃声と剣が肉を切り裂く音が響く。
騒がしかった声は叫び声から呻き声に変わり、ついに静かになった。