第8章 去れど一難
ローが部屋を出て行ってから数時間がたった。
部屋の隅に蹲る。
ここに来てから約一週間がたつ。
エースさんやお父さん達が助けに来てくれら。…なんて願ってた。
…だけどこの船は。
いや、潜水艦は、海の中。
この広い海で海中の船を見つけること、それを水上に上げることがどれほど難しいか理解は出来ている。
________コンコン
少し遠慮がちにノックが2回なり、部屋に入ってきたのはトレーを持ったシャチさんだった。
シ)「あの、ご飯…」
正直、この船の料理が美味しいのか知らない。
まともに食べたことがないから。
お腹が空いても、目の前の料理に食欲がそそられることはなかった。
喉にブレーキがかかってるみたいに、どんなに胃袋が待ち構えていても、喉に食べ物を通そうなんて気にはならなくて。
料理が机の上に置かれるも興味なさ気に顔を伏せていると、シャチさんに手を握られ反射的に肩を跳ねさせた。
シ)「…ごめんね。痛いよね、苦しいよね…」
いきなりの言葉に何も言えないでいる。
シ)「でも船長、本当は凄く優しいんだ。
わかりづらいかもしれないけど…
……この船にいるクルーの殆どが、不治の病にかかってた。
医者に見放された俺たちをあの人は助けてくれた。
船長は“優しい”なんて一言でまとめられるような性格じゃないけど、それでもクレアちゃんをただ苦しめてるだけじゃないんだ。
ちゃんと理由があって…それを成し遂げたいから、目的があるから、やってるってことを。
…わかっていて欲しい。」