第7章 if(入野)
遠くから声が聞こえる。
「ミュー?」
瞼を閉じ、微睡みながら返事をする。
「ん…?」
返事をするものの、再び呼ばれる名前。
「ミュー?ミュー?」
少しイライラしながら再度返事をする。
「何??」
スッと瞼を薄く開き、視界を確認する。
横になってソファに寝転ぶオレの側には誰もいない。
お腹に感じる程良い重みにウトウトし始めると…
「ミュー?どこ??」
「だから!何!?」
ソファから立ち上がり、ドアを開け廊下へ声を張り上げる。
廊下の床で四つん這いになって、玄関の靴箱の下を覗いている。
さっきまでの苛立ちは消え、頭の中には『?』でいっぱいになる。
「ね…?紗友…何やってるの?」
「え?ミューを探してるの。」
「ミュー…もしかして…」
少し大きめのパーカーの胸元のチャックを開ける。
そこからロシアンブルーの猫が顔を出す。
「ミュー!」
パッと紗友の表情が明るくなる。
「ニャ~。」
「え…いつから名前がミューになったの…?」
オレのパーカーの胸元から猫を取り出し、胸元に抱き寄せる。
「え?だって…」
少しばつが悪そうな表情を浮かべる。
「ん?」
促すように問いかける。
「えっとね…。」
「ミユからのプレゼントなんだよ?とか…」
「ミユから貰ったんだよ!とか…」
「ミユ、ミユ言ってたら、ミユで反応するようになっちゃって…」
「だから…ミューにしたの。」
眉を寄せて、紗友は俺の顔を覗う。