第29章 strawberry(梶)
「梶くんのせいで紗友帰っちゃったよー。」
「え?オレのせい?」
「やっと会えたのに。」
「何?下野さんの好きな子?」
「ストレート過ぎだろ。」
「えー。あんなに若い子…随分頑張るんですねぇ。」
「別に好きとかそう言うんじゃねーよ!」
「ふぅん。じゃあ、オレが手を出しても問題ないですね。」
あの時は冗談だったのに。
人の心は分からないものだよね。
今では、こうして二人で出掛けてる。
下野さんには内緒だけど。
「梶くん…」
「ん?名前じゃないのは残念だけど、『さん』から『くん』になったから昇格出来たかな?」
「昇格って…」
そう言って微笑んでくれる紗友ちゃん。
まだ手はつなげないけど。
それでも少しずつでも距離が詰められたのなら。
高望みはしないで。
一歩一歩確実に。
でも………
遠くない未来に、この想いをぶつけてしまうと思うんだ。
その時は…
また今日みたいに微笑んでくれると嬉しいな。
「ねぇ?来月も来ようよ。」
「クリームソーダ。来月は何かな?」
「そんなにハマっちゃいました?」
「うん。ハマっちゃったみたい。」
紗友ちゃんにね。
END