第12章 for You…(前野)
「穴があったら入りたい…」
再び隣でクッションに顔を埋めている。
「どした?」
「………」
耳が赤い。何でだ?
「具合でも悪くなった?」
クッションから少し顔を上げて返事をする。
「いえ…恥ずかしくなって…」
「?」
「さっきの映画…前野くん…出演してたんだね…。」
「あ……うん。」
「演じた人の前でバタバタして…すみません。」
「穴があったら入りたい……。」
再びクッションに顔を埋める。
「あはは。」
「笑うなんて、ひどい…」
眉を寄せて、オレを見つめる。
「いやいや。演じ手としては嬉しいよ。」
「俺じゃなくて『ピーター』として違和感無かったって事だろう?」
「友人に気付かれないってのは、嬉しい限りだよ。」
「サンキュー。」
ポンポンと頭を撫でる。