第12章 for You…(前野)
遡ること数時間前。
(もしもーし。前野?)
「あー。タツ。どした?」
(仕事終わった?)
「あぁ。さっき家に着いたとこ。」
(これから予定無いよな?)
「は?何で無いとか決めつけんだよ。」
(何だよ。どうせ無いだろう?)
「………無いけど。」
(良かった。これから紗友と家で飯食う予定だったんだけど打ち合わせ入っちゃって。)
(お前ん家に行かせるから、何か食わせてやって。)
「はぁ!?」
「延期すれば良いだろ?」
(あ”?俺に会うために可愛くしてきた女をとんぼ返りさせる訳に行かないだろ?)
「お前な…」
(何か観たいテレビがあるって言ってたから外食は無しで。)
「はぁ!?」
(お前ん家は、前に行ったことあるし分かると思うから。)
(んじゃ。よろしくなー。)
(あ。手ぇ出すなよ?(笑))
「バカかお前は…」
桐島紗友
タツの友人で、何回か会ったことがある女性。
1度だけタツと一緒に家に来たことはあるけど…
「何でよりによって家に来るんだよ…」
~♪
スマホの画面をなぞる。
『前野くん。』
『急にごめんね。』
『ご迷惑だし。私、やっぱり帰るよ…』
*******
『家にいるし。』
『どっちでも良いよ。』
『来たとしても大したもてなしは出来ないけど。』
~♪
『もう家出ちゃったし…』
『実は…観たいテレビが19:56~あって…』
『今から戻っても間に合わないの。』
『本当はタツの家で観る予定だったから…。』
『観終わったら帰るから、お邪魔しても良い?』
*******
『別に良いけど。』
~♪
『じゃあ、お言葉に甘えて。』
『あと30分くらいで着くと思う。』
『よろしくお願いします!』
「19:56って…まさか…」
テレビの番組表を確認する。
『アメイジング・スパイダーマン2』
「おいおい。嘘だろ……」