第1章 ~序章~二人の証
――宣言式の日から3年―…
「ゼノ様っ…!!」
公務のため、数日間城を空けていたゼノに向かって、笑顔のユヅキが小走りで駆けてくる。
その姿を見てゼノは慌てて駆け寄り、少し眉をよせながら静かな声でユヅキの行動を制した。
「…ユヅキ、大事な身体なんだから走るな。」
そう言って心配するゼノの胸元に顔を寄せながら、ユヅキは少し恥ずかしそうに呟いた。
「…すみません……でも、ゼノ様にお会いできたのが嬉しくて…つい…」
(全く…本当に仕方のない奴だ…)
そう思いながらゼノはふっと小さく笑みを浮かべ、ユヅキの頭と小さな命が宿るお腹を撫でた。
「……あっ…」
その瞬間、ゼノに撫でられたのをまるで喜ぶかのようにユヅキのお腹の中で赤ん坊が動いた。
それに気付いて、少し驚いた顔をするゼノを見上げながらユヅキは微笑んだ。
「…この子もゼノ様のことが大好きみたいですね」
その言葉に少し頬を染めたゼノは、ユヅキを真剣な眼差しで見つめた。
ゼノ「ユヅキ、何があっても俺がお前達を守る。だからユヅキは身体を大事にしろ」
そう言って優しくユヅキのおでこに口づけをしたゼノは、マントを翻し、また公務へと出掛けるのだった。