第7章 日曜日
「萬里小路と言えば京でも屈指の名門。そこの令嬢が何故書店の店先で客を次々と蹴り飛ばして病院送りにしているのだ。反抗期か?」
「話せば長い話になんだよ。長い長いヒゲ子の話だよ。まず書道についての認識からスタートしなきゃないからよ。そこからもう長い訳。書道やってる大先輩らの寿命ばりに長い。相当覚悟して聞かねえと魂の蝋燭があっつう間に半分くらいになっからね。腹切るくらいの心構えで聞きなさいよ?いいか?いいのか?話しちゃうよ、俺は?え?どうなの?」
「そうか。では止めておこう」
「あそ」
「うむ。何だかすまんな」
「別に。俺だってどうしても話したい訳じゃないからね。平気だよ、ぜーんぜん」
「・・・・・」
「・・・・・」
「気に障ったか?」
「いいってもう」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・銀時。矢張り聞かなくもないぞ?話したければ話してくれ」
「うるせぇな!何でそんな気ィ使う訳?年頃の女の子にするみたいなハレモノ扱いすんなっての!話したくて仕方ないのに話させて貰えなかった可哀想な人じゃねぇぞオレは!てかもう退院しろ、ヅラ!イラッとすんだよ、寝てても起きててもお前の気配がもうイラッとするわ!お前のせいでそれでなくても不愉快な病院生活がますます不快適になっちまってんだよ!?どうしてくれんだ、この不快感をよ?あ"あ"?!」
「当分退院は無理だ。あの女人の蹴りを正面から食らったせいで、何か内臓破裂的な事態に陥っているらしいからな。無闇に動くと息の根が止まる」
「グットニュースじゃん。ヅラ、ちょっとそこで反復横跳びしてみ?」
「フ。たまにはゆっくり骨休みも悪くない・・・」
「すげえな。全然人の話ィ聞いてねえぞ、この犯罪者は。これくらい図太くねえと攘夷志士は勤まんねんだろうな」
「おい新入り、売店行って焼きそばパン買って来やがれィ。三秒で戻って来ねえと腹パンくれてやっからな?お?」
「新入りじゃないヅラだ・・・焼きそばパンか・・・。揚げパンでどうだ?」
「焼きそばパン食べたい人に揚げパン勧めるなんて何か斬新だねえ。ぜーんぜん人の事なんか考えてないんだろうね、この人」
「沖田、売店になら私が行くぞ?」
「いいから。内蔵が爛れて血便出ちゃった人は売店なんか行かなくていいから。大人しくしてろ、河合」