第52章 お化け屋敷
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遡ること30分前…
「なぁ、この迷路から一番に出たやつが次のアトラクション選ぶってのはどうだ?」
『…やだ』
「おやおや?もう負ける気ですか、かなたチャンは」
『(カチン)…やらないとは言ってない』
「よし!じゃ決定な。って木兎!フライングしてんじゃねえよ!」
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結果。
勝者:黒尾
『だって、きん差で…しかも、最後の最後に…あー!!もう!!』
「あんなに叫ぶかなた、珍しい」
「確かに。合宿とかでも応援するにも、あんなに感情を剥き出しにしてるの見たことないね」
「俺も、今までに両手で数える位しかない」
「さて、誰から行く?」
『クロ。アトラクションは選んでいいとは言ったけど、1人で行くとは決めてない。私、研磨と一緒じゃなきゃ入らないから』
研磨の腕にしがみついた。でも、研磨は嫌がりもしないで少し震える私の手を見て、頭をよしよしと撫でてくれた。
本当、研磨好き。
違うな、大好きだ。
「なら、俺と入ろうぜ!へいへい
『嫌です』
「え、最後まで言わせろよ!」
『絶対突っ走って、絶対置いてかれるから』
「おやおや~?ハイスペックなかなたチャンは、お化け屋敷が怖いの?」
「黒尾さん、言い過ぎですよ。可哀想じゃないですか」
なんで、クロは私に意地悪ばっかり…
泣かない!泣きたくないけど、目に涙がたまってきて
『………』
「…あ」
『…っ…こわくて…わるいの…?』
「「へ?」」
もう、クロなんて…
『…クロ…嫌い。研磨、赤葦さん行きましょう』
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「かなた。クロが好きなものご馳走してくれるって」
『…研磨も一緒?』
「うん」
『…赤葦さんも一緒?』
「うん」
『ケーキは?』
「あるよ」
『…わかった』
(あ、春風きた)(かなた…その、わ、悪かった)(…許してあげる)(よかったじゃんか!クロ!)(木兎さん、静かにしましょう。周りの迷惑になります)(研磨の隣に座ってもいいかな?)(おいで)((俺にも甘えて欲しいだけなのに…))