第15章 〈南九〉あなたと共に
その次の日、南戸は柳生家の門の前に立っていた。
「……若、いきなりどうしたんだろうな〜」
南戸は空を見上げた。
昨日、九兵衛は家に帰るなり南戸を呼び出した。
「……若、どうしたんですか?」
「ん? なあ、南戸」
九兵衛は少し顔を赤らめた。
「……僕と……明日、どこか一緒に出かけないか?」
「……嬉しくてOKしちゃったけど……」
(若は本気じゃねェんだろーなー)
そんなことを思いながら、南戸が待っていると……。
「……南戸」
「ん? あ、若……」
そこには、髪の毛をツインテールにして丈の短いピンク色の着物を着た九兵衛が立っていた。いつもの眼帯はピンク色のお花のものに変わっている。
「……ま、待たせたな」
「い、いえ!」
南戸は九兵衛を見ながら思った。
(ヤベェ、可愛い)
ーーいつも、男装をした九兵衛しか見たことがなかったため、南戸はその可愛い姿のギャップにドキドキした。
「……じゃあ、行くか」
「はい!」
心なしか、自分の心に余裕がなくなっている。
(情けねェ……)
ー今まで、こんなことなかったのに……。
南戸は隣を歩いている九兵衛を盗み見ながら聞いた。
「ところで若、どこへ行くんですか?」
「ん? ああ……買い物に行こうかと……」