第7章 〈阿伏兎〉夜兎の使命を守るため
「朝霞、今回までだ」
「……」
「じゃあ、そういうことでごちそうさま〜」
食べるだけ食べて、神威はニコニコと食堂を後にした。
「……阿伏兎さん」
「どうした?」
「……どうして……そんなに団長に甘いんですか?」
ーー阿伏兎はいつもそうだった。団長がやりたくないことを全て肩代わりしている。
「……なあ、朝霞」
阿伏兎は椅子に座り、机に両肘をついて手を組んだ。
「さっきも話した通り、俺たち夜兎は絶滅危惧種ってやつになってる」
「……」
「理由は戦いを好むあまり、後先のことを考えず戦争を起こし、数がどんどん減っていったからだ」
「……」
「これ以上減ったら……わかるだろ?」
「……」
ーー夜兎は本当に絶滅する。
「今、春雨本隊と戦ったらどうなると思う。俺たちは確実に殺される」
「……」
「あの団長と言えど、春雨の隊長たちを相手にすれば死ぬ可能性だってある。まあ、死んだ方がいいのかもしれんが」
「……」
「だから、今、提督からの命令とは言え、団長を怒らせるわけにはいかない。自分たちの身が危ないからな」
「……」
「あいつは根っからのバカだからそういうことは考えない。だから、誰かが抑制しなきゃならねェ。頭の良いお前なら……わかるだろ?」