第7章 〈阿伏兎〉夜兎の使命を守るため
「団長ー!」
若い女の人が1人、船の中を走っている。ーー彼女の名前は朝霞(あすか)。ここは宇宙海賊春雨第7師団の船の中。春雨の第7師団は乗組員全員、絶滅寸前の宇宙最強の種族である夜兎で構成されている。ーー彼女もその中の1人だった。
「団長ー!」
「……どうしんだ? 朝霞。そんなに走り回ったりして」
「あ! 阿伏兎さん!」
壮年の男性が声をかけた。ーー彼の名前は阿伏兎。春雨第7師団の副団長を務めている。
「あの、団長を見ませんでしたか?」
「……団長なら……さっき、ご飯を食べに行ったが……何かあったのか?」
阿伏兎は顔をしかめて、目の前の女を見つめた。
ドキッ
「え、えっと……この前、戦った相手についての報告書を出せと提督から命令がきたので……」
「あァ……あのバカ提督……あのバカに始末書を書かせるつもりか……」
阿伏兎はため息をついた。
朝霞も困ったように笑った。
「団長に書かせるのはちょっと心配ですが……今回は阿伏兎さんに頼らせるなって……」
「前回も前々回も俺が上手く言いくるめたからよかったが……今回ばかりはそうもいかないらしいな〜」
朝霞はムッとした。
「あのバカ提督……私たち夜兎を潰す気でしょうか?」