第3章 〈銀魂〉彼らは万事屋
暗い夜道を自分の家に向かって、1人の女性が歩いている。そして、自宅であるマンションの扉の前まで行くと、その前に立ちはだかっている人に驚いて足を止めた。
「吉田さん……」
「奈央……捜したよ……」
そこには、とても感じの良さそうな眼鏡をかけた男がいた。
「どうしてここが……?」
「突然、会社を辞めて引っ越すから驚いたよ。君の友達に聞いて回って漸く住所を教えてもらったんだ」
「またそんなことを……」
「お母さんが入院してるんだって? 失業中じゃ、生活も大変だろう?」
男は優しく笑っていた顔を豹変させた。
「意地を張らないで、もう僕のところへ戻っておいで。正式に結婚して、お母さんを安心させてあげよう」
女は後ずさった。
「お……お願い、私のことは諦めて……何度も言ったように私はあなたと結婚なんて……」
男は女の言葉を無視して、彼女を壁際へと追い詰める。
「いい加減に諦めろ。君が僕なしで生きられるわけないだろう」
男は冷たい目で女を見下ろす。
「君みたいに何にもできない! 仕事もない! 自立できない女が! 僕なしでどうやって生きていくんだ!? あァ!?」
「ひっ……」
男は壁をガンガンと大きな音を立てて叩きながら、女に暴言を浴びせる。