第3章 血色 あかいろ 完
あたりに充満する鉄の匂いに、あたしは吐きそうになった。
いったい何が起こったのか。
気付けばあたりは血の海で、仲の良かった卑弥呼や、蛮に銀次君、かづ君、十兵衛、俊君は横たわっていて起き上がる気配はない。
あたしの目の前にはえみ君も倒れてた。
状況が理解出来なくて、ひどく混乱してる。
「何が起こったかわからないという顔をしてますね。」
聞き覚えのある声に、振り返れば赤屍蔵人が座り込むあたしを見下ろしていた。
その横にうつ伏せに倒れて動かないシド君の姿もある。
「……あ、赤屍、なんで…?」
「さあ、何ででしょうね。
私が怖いですか?さくらさん?震えてますよ。」
くすりと笑いながら見下ろす赤屍を睨みつける。
今のあたしにはそれが精一杯だった。
「良い顔をしますね。とてもそそられます。
さくらさん、貴女はこんな所で終わるような人じゃないでしょう?」
嘲笑うかのような笑みを浮かべ、赤屍はあたしの側まで来ると、その冷たい唇であたしのそれを塞ぐ。
「…っっ!」
あたしは驚いて一瞬固まったが、次の瞬間には思い切り赤屍の胸を押し返す。
くすりと笑いあっさりと離れた赤屍に拍子抜けした。
「楽しみにしてますね、さくらさん。」
そう言い残し赤屍は去って行った。
赤屍が居なくなって安心したのか、あたしの意識はそこで途切れた。
「っていう夢を見たの。怖くない?」
「それは怖いね、さくらちゃん。」
「でしょ?銀次君もそう思うよね?」
「うんうん。怖いよ。」
ポールさんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、あたしは奪還屋のふたりに夢の話しをする。
話しを聞いてたポールさんも苦い顔をしてた。
蛮は興味ないのか無関心だ。
そんな蛮にイラッとしたので話しをふってみる。
「蛮もそう思わない?」
「知るか!」
「ひどくない?ねぇ、ちょっと蛮ってばー。」
「あー、五月蠅ぇ!そもそも俺はあいつに殺られたりしねぇよ!!」
「自信過剰じゃない?」
「事実だ。」
「あー、そう。」
依頼もなく平和な午後のホンキートンクでの会話。
たまにはこんなのんびりするのもいいよね。
最近いろいろと殺伐としてたし。