第6章 "その人"の名前
黒川さんと出会ったのは6月の梅雨時だった。
気が付けば、もう11月。
季節は変わり、秋が訪れた。
今朝は起きると黒川さんがいた。
「おはよう黒川さん…今日はちょっと冷えるね。」
「おはよ。そうだな…もう11月か。」
私は温かい紅茶とコーヒーをいれ、黒川さんにコーヒーを渡した。
「ありがと。」
黒川さんはマグカップを受け取って微笑んだ。
「黒川さん今日は休みなの?」
「うん。」
「そっか。」
季節は変わったが、私達の関係は変わっていなかった。
変わったことと言えば、私が黒川さんを好きになったことくらいだ。
黒川さんは相変わらず秘密主義だし、私のことをどう思っているかも分からない。
ただ、私が仕事探しをすることを良く思わず、私も最近は求人サイトを見なくなった。
しかしいつまでこの日々が続くのだろう。
明日、突然黒川さんが私の前から姿を消すのではないだろうか…そんな漠然とした不安を抱えていた。
私にとって黒川さんは、近くもあり遠くもある存在だ。