第5章 不審な出来事
「おかえり。」
マンションに帰ると、珍しく黒川さんが先に帰って来ていた。
いつもと変わらない様子で窓辺で煙草を吸っている。
「…ただいま。」
私は意を決して、黒川さんに三人が消えた話をすることにした。
「黒川さん…。」
「なに?」
「あの三人…私とひなこをレイプした奴らが…いなくなったの。」
黒川さんの表情の変化などを見逃さないように、じっと彼を見つめて話した。
だけど黒川さんは表情一つ変えなかった。
「ふーん。良かったじゃん。」
口調も普段と変わらない。
「ひなこが最後に三人に会ったのが今週の火曜日で、それ以降音沙汰がなくなったらしいの。」
「へぇ、それで?」
「こんなこと言いたくないんだけど…三人が消えた件と黒川さん、何か関係があるの?黒川さん私が妊娠した時に言ったよね?そいつ俺が消してやろうかって…。」
黒川さんは私を見て笑い出した。
「シュリ、サスペンスドラマの見すぎじゃない?」
「わ、笑わないでよ!私は真剣に…。」
「その三人の名前も顔も知らない俺に何ができるの?」
「それは、そうだけど…。」
「とりあえず良かったじゃん。三人がいなくなって。」
黒川さんは私の頭をポンポンと叩いた。
「シュリは俺のこと疑いすぎ。」
そう言って黒川さんは浴室に行ってしまった。
そう…その通り。
黒川さんの言う通りだ。
三人のことを何も知らない黒川さんに何かできるはずがない。
私自身、そう思った。
だけど疑念が消えないのは何故だろう。
その後、その三人が私とひなこの前に姿を現すことはなかった。