第3章 不幸少女
「俺あんなのに見えるのかー。まぁ、違うから安心しな。」
安心しな、と言われても…。
どうにも、黒川さんへの不信感が拭えない。
「そういうシュリはなんの仕事してるの?」
「私?私は工場勤務だよ。」
「ふーん。そんな地味な仕事してないで、夜の仕事でもすればいいのに。シュリなら美人だしイケるよ。」
「絶対に嫌。真面目にコツコツ働く方が私には向いてるの。」
夜の仕事なんて考えたこともなかった。
そういう世界に足を踏み入れる勇気もない。
仕事の話になり、昼間パートのおばさん達が話していたことを思い出した。
「そういえば、1つ愚痴…っていうか悩み?聞いてくれる?」
「なに?」
「なんかね、パートのおばさん達の話だから本当かどうか分からないんだけど、うちの工場今、経営苦しいらしくて…かなりの人数がクビにされるかもしれないって。そうなったら私真っ先にクビにされるよー…。」
「ふーん。そしたら生活どうすんの?」
「速攻で新しい仕事探すしかないよね。貯金も無いし…。」
「まぁ、困ったら俺ん所来れば?次の仕事決まるまで居ていいよ。」
「え?」
それって…黒川さんと同居するってことだよね…?
気持ちは嬉しいけどそこまで甘える訳にはいかないし、何よりこの謎めいた男と同居なんて怖すぎる。
「いやいや、流石にそこまで甘えるわけには…。」
「俺は別にいーよ。」
「まぁ、まだクビになるか分からないし…。」
しかしこの3日後、経営難の話は事実で、私は解雇されてしまった。