第2章 恐れていたこと
「ここ、病院なの…?」
「そうだよ。」
足早に建物の中へ入って行く黒川さんの後を慌てて付いて行った。
建物の中は薄暗く、病院というよりは廃墟ビルのような雰囲気だった。
こんな所で中絶手術をするなんて…少し怖くなってきた。
黒川さんは建物の奥の一室に入った。
「どーも、蜂谷(ハチヤ)先生。」
「久しぶりだな、黒川。」
部屋の中は普通の病院の診察室と変わらなかった。
蜂谷先生は50代くらいの強面の人だった。
「こいつ、よろしくお願いしますね。」
黒川さんが私の頭に手を置いた。
「黒川から話は聞いたよ。普通の病院だと色々面倒だからね。さっさと済ませようか。」
"普通の病院だと"
その言葉が気になった。
不安になり、黒川さんを見るといつもの笑みを浮かべた。
「大丈夫。すぐ終わるよ。」
「そういう問題じゃなくて…。」
黒川さんは私を置いて部屋から出て行ってしまった。
「それじゃあ、始めようか。」
蜂谷先生にそう言われ、私は不安を抱えたまま手術台に寝た。
麻酔を打たれ、すぐに眠りについた。