第36章 君がくれる口づけは《カラ松END》
カラ松くんに抱きしめられながら、ふと、どうしてこんなことになっちゃったんだろう、という考えがよぎった。
どうして……
こんなはずじゃなかったのに……
わたしが、カラ松くんの日記を見たせい?
わたしが……存在しているせい?
わたしさえいなければ、カラ松くんも、みんなも、今頃仲良く笑って暮らしていたんじゃないだろうか。
わたしが…わたしが現れたばっかりに。
「カラ松くん……っ」
鼻がつんとして、涙があふれてきた。
わたしは、涙に濡れた顔を、血を吸って赤黒くなったカラ松くんのパーカーに押しつけ、カラ松くんの背中を抱きしめた。
「カラ松くん、ごめんなさいっ……わたし……わたしのせいだ……っ」
カラ松「……な、なんで謝るんだ?さくらは何も悪くない」
「わたしが何もかもいけなかったの…っ、ぜんぶわたしの責任なのっ」
ぎゅうっとパーカーを握りしめると、そこから血が染み出してきて、わたしの手を真っ赤に濡らした。
その赤い血が、ますますわたしの情緒を不安定にした。
「カラ松くんっ……カラ松くんっ……」
狂ったように、カラ松くんの名前を呼ぶ。
寂しい、
怖い、
悲しい、
愛しい……
色々な感情が、怒濤のように胸の中を逆巻いた。
……はは。わたし、なにしてるんだろう。
わたしには、もう何も残っていないんだ。
今、目の前にいる、この人以外、何もない。誰もいない。
「……カラ松くん、好きだよ。今も、昔も、あなたが、好き。だから……」
わたしは、カラ松くんの耳元で、とある言葉を囁いた。
とある言葉……これが、わたしの最後のお願いだ。
カラ松「さくら……」
カラ松くんは、少し驚いたように目を見張り、
そして、優しく笑ってうなずいた。
カラ松「……さくら、ありがとう」
カラ松くんは、そう言って、わたしの唇に己の唇を重ねた。
カラ松くんがくれた口づけは、血の味がした。