第9章 一押し二金三男 \❤︎/
「…ん…」
うっすらと目を開けると、明るい陽の光が眩しいほどに部屋を包んでいた。
気がついた時にはいつの間にか眠ってしまっていたようで、体には丁寧に布団が掛けられている。
寝起きの冴えない頭のままキョロキョロと辺りを見渡すと、窓の縁に腰掛け海を眺めながら煙管を咥える高杉の姿があった。
「…起きたか」
「…晋助様、」
高杉の姿を見つけて怠い身を起こそうとすると、途端に腰に鈍い痛みを感じた。
そうだ。
昨晩は高杉の自室で朝方まで抱かれ続け、そのまま眠りに落ちてしまったのだ。
昨日のことを思い出して凛は頬を赤く染めた。
「今日は随分と大胆だな」
「…へ?」
高杉に指さされて自分の胸元を見ると、一糸纏わぬ姿だった。
凛はバッと両手で胸元を隠すと、赤い顔のまま高杉を睨み付けた。
「そんな可愛い顔で睨み付けるな。もう何回もヤってんだ。隠す必要なんてねェだろ」
「何回しても見られると恥ずかしいんです!もう!」
高杉はからかうようにフッと鼻で笑うと、煙を吐き出して言った。
「午後になったら出掛ける。支度しとけ」
「はい!」
そう言うと、高杉は煙管の灰を外に捨てて部屋を出て行った。
凛も高杉を見送ると、部屋から出て自室へと向かった。
腰の痛みを我慢しながら軽くシャワーを浴び、着替えて身支度をする。
思えば高杉と二人きりで町に出るなんて初めてで、考えると自然と心が踊った。
少しでもお洒落をしたくて、数少ない着物の中から一番のお気に入りを選ぶ。
高杉の横に立って、恥ずかしくないようにしていたかった。