第8章 あわよくば \❤︎/
今日は……なぜだか艦が江戸の港に着いた。
理由は分からないが高杉の命だったらしく、皆もしばしの休息時間といったところだ。
凛もまた子達に誘われ、江戸の町に繰り出した。
「…なぜ、突然江戸の町に戻ってきたのでしょう」
「…何か用事があったのでござろう。晋助の考えていることはわからぬ」
万斉ですら理由を知らないらしい。
高杉のことだから何かあるのだろうが、その何かとはなんなのだろう。少し、気になる。
「気になるんなら晋助様に聞いてみたらいいんじゃないスか?」
「晋助殿は気まぐれですからねぇ」
確かに高杉は気まぐれだし、自分のことも多くは語らない。
目的を話さないのもよくあることだから皆はそれほど気にしていないようだった。
「とにかく、晋助様のおかげでわたし達は遊べるんスから感謝しなきゃッス」
「悪いことではないようだから大丈夫でござろう」
「そう、ですね」
あまり他人を模索することもよくないと思い、凛は考えることをやめて三人に向き直った。
また子も万斉も武市も面白いから、一緒にいて飽きないし楽しい。
それに、自分なんかにもいつも優しくしてくれる。
本当はすごくすごくいい人達だ。
一日中江戸の町をぶらぶらと歩き回って、気づけばもう日は沈みかけていた。
そろそろ艦に戻ろうとして長屋が建ち並ぶ道を抜けていると、細い路地裏にふと見覚えのある着物が見えたような気がした。
振り返ってよく見ると、白の着物に綺麗にまとめあげられた黒髪には簪が刺さっていて、手には小包を抱えた美しい女性。
そしてその隣には頭に包帯を巻き、蝶柄の着物を纏った男がいた。
それは紛れもなく、