第11章 太陽と月
「………晋助様」
「なんだ、」
「……ひとつ、聞いてもいいですか?」
「あァ」
思い切って、前からずっと気になっていたことを聞いてみた。
「晋助様のその左目…もう痛くないんですか?」
すると高杉は少し置いてから言った。
「もう痛くねえよ。傷が疼くこともねェ。」
「そう、ですか…」
凛には、右目も左目もある。
高杉は右目が見えていても、いつも包帯に覆われた左目は見えていないのだ。
その理由は一応知っているが、これ以上深く訊いてはいけない気がしていた。
「あの…もし気にかけさせてしまったらごめんなさい」
「聞いといて何言ってんだ。それにもう気にしてねえよ」
片方といえど、目が見えないことの大変さと苦労は計り知れない。
それについて、高杉自身はどう思っているのだろうか。
「コイツのこと気にしてんのか?」
高杉は持っていた煙管で左目を指して見せた。
「…はい、」
「俺には右目が残ってんだ。それに手も足もあるし耳も聞こえる。そのうちの一つがなくなろうがかまやしねえよ」
そして包帯の上から自分の左目に触れた。
「だが、これ以上は御免だな」
すると高杉は向かいに座っていた凛を引き寄せて膝の上に乗せた。
「お前のツラが見られなくなるのは御免だぜ」
「晋助さ、」
「抱いてる時のお前の姿も、俺の下で啼いてる声もまだ見てえし聞きてえからなァ」
「っ……」
その言葉が恥ずかしくて、思わず凛は頬を染めた。