第10章 キラキラ.*・゚
だんだんと気温が上がり夏が近付いてきて、部屋の中は湿気で篭っていた。
涼しい風を求めて凛は窓を開けると、そこから差し込む海風と潮の匂いがなんとも涼しげで心地いい。
最近はいきなり環境が変わったからか、体調を崩しがちでだるい体に喝を入れて凛は海を眺めた。
青い空に青い海。
昔からこの景色が大好きだった。
嫌なことがあってもこの景色を眺めていれば嫌なことも忘れられるような気がした。
自然と笑顔になって、この景色を眺めているといきなり勢いよく部屋の扉が開いた。
驚いて後ろを振り返ると、そこには金髪の女・来島また子の姿があった。
「白石凛」
「…来島、さん?」
「来るッス」
「…え?」
「だから来いって言ってるッス」
また子の鋭い目つきと強引な言葉に、凛は重い腰をどうにか上げてまた子が待つ扉へと急いだ。
するとまた子は言葉同様強引に凛の腕を掴んで引っ張った。
「…来島さん?どこに行くんですか?」
「どこでもいいだろ」
怒っているのだろうか。
素っ気ないその言葉に凛は不安を覚えながらも、ただ黙ってまた子についていくしかなかった。
開けっ放しにされた窓からは、今も心地よい風が部屋の中を満たしていた。