第11章 ひとくちホテルの事情
さん
あなたに、
ずっと触れてみたかった。
彼女はそう言って、くすくすと笑った。彼女のかきあげられた髪が、さらさらと横に揺れる。彼女の親指の先端には、私の乳輪があった。もっとやらしく触って欲しい...と視線を斜め下に動かす。
「夢みたい....やわらかい......」
そう言って彼女は、ゆっくり、優しく手を動かし始めた。夢みたい、だって。私と繋がれる事が。
この言葉を聞いて、私はいぜんワクワクと胸をときめかせた。ーー今から行われる異世界的な事は、きっともう、2度と、人生で経験する事はないだろう。
「私も」
と、私は彼女の胸の谷間に視線を落とした。隙の多い服。前髪を長くして横に流し、おでこを見せる大人っぽい髪型の彼女。
その人と、今日、繋がる。
私は男の人だけが好きになるけど、女の人にもやや欲を抱くようだ。でも、おなじ女の人には恋はした事はなかった。だから。彼女と深い関係になる事はない。
ーーーーきっと後にも何も残らないようなセックスするんだろうな。
在るのは強い情欲だけ。すでに虚しさすら感じ始めている。
でも。
彼女が私の唇にキスをする。うおっ、と思った。結構心地よくって、目を細めてしまう。
恋することはできなくても、一生、性的にタイプな感じの女の人とヤれないだなんて嫌。
この日、私は好きじゃない人と、最後までいった。