第1章 お待たせン♪
「ちょっとやめてよ!!」
「いいじゃん、何もしないって。もう夜遅いから、ほら」
ホテルのドア付近で、金髪の男と茶髪の女が揉めていた。
「うう〜ン」
その様子を、そのホテルのカウンター人が見ていた。
「おいクソ新人、サボってねぇで掃除しろ!」
ホテルの店長がやってきた。
「何ボーッてしてんだ!」
今日も彼はこのカウンター人に不快感を抱いているらしい。
「ここのホテル、ラブホじゃないのにねン」
「あ?そうだろ、それがどうした?」
カウンター人が店長の顔を見る。
「ホテルがこんな見た目だと、勘違いしちゃう
よねン♪部屋もそれっぽいしン♪もうそういう
ホテルみたいに半分なっちゃってるし
♪ププーン!」
と愉快そうに笑う。
鈍い店長は、
「何訳わかんねぇこと喋ってんだ、仕事しろ仕事」
「店長おー!ちょっとこっち来てくださいやばいです!」
何やらトラブルが起きたらしい。すぐに店長が従業員室に入って行った。
ホテルのカウンター人は、そんな店長の姿を見送った。
と、ふいに、ピンクのクルクルの髪を揺らし、彼はこちらを振り返った。相変わらずの、少々奇妙な笑顔。
「待たせてごめんねン、ただいま♪」