第75章 89.Masterly ! And Farewell !
臨が織姫と石田の口を手で塞ぎ、しゃがんだまま屋根の上から下の様子を伺う。
「くそっ!!また行き止まりじゃねえか!!」
その声の主、更木剣八に視線は外さない。
「もういい!次行くぞ!!」
そう言って背を向ける彼の姿を見て、臨はほっと胸をなでおろすと二人を解放した。
「な、なんですかあいつ、すごい強そうだったけど……」
「13人いる隊長のうちの一人です。まあ見つからなければどってことない人なんですが見つかると厄介ですので……」
「ああ、黒崎と同じタイプなんですね。強いけど探知能力は低いっていう。」
そう言うと石田は次はどっちにいけばいいですかと臨に聞く。すると織姫は何かを見つけたらしく、指をさした。
「あっちに塔みたいなのがみえるけど……あれは?」
臨が織姫を見る。すると次の瞬間、織姫の後ろに立つ人物を見て驚愕した。
振り下ろされる剣と、舞う土埃。
「………ふむ、止められましたか。」
砂埃から臨が現れる。
それを見てその男は目を細めると狙っていた少女が遠くに離れていることに気がついた。
「あの間合いで逃げるとは中々の腕前……お見事!」
剣が離れる。
「そしてさようなら!後悔なさい!出会った相手が私でなければ、今少し長生きもできたでしょう!」