第333章 616.ミミハギ様
「尸魂界も現世も…虚圏も消えちまうってのか……!!」
恋次が大声をあげる。
「どうすりゃいいんだ…何かやれる事は無えのかよ!!」
すると 浮竹は一歩踏み出し 俯いた。
その背後から 黒い影が伸びる。
「俺が」
「…浮竹隊長……!?」
ルキアが目を見開く。
「浮竹サン…それはーーー…!?」
「俺が 霊王の身代わりになろう」
その言葉に 浦原は驚愕した。
「…………そんな事が……!?」
「説明は後だ」
隊長羽織ごと 上半身の身頃を脱ぎ捨てる。
そこから覗く黒い目に ルキアは絶句し 動きを止めた。
「ミミハギ様
ミミハギ様
ミミハギ様
御眼の力を 開き給え
我が腑に埋めし御眼の力を
我が腑を見放し開き給え
ミミハギ様
ミミハギ様
御眼の力を 開き給え
我が腑に埋めし御眼の力を
我が腑を見放し開き給え」
黒い影が 天へと伸びる。
「…俺は 3つの頃に重い肺病を患った」
浮竹が 呟く。
「この白い髪はその時の後遺症だ。
そのことは 知っている者もいるかと思う。
俺は本来なら その3つの頃に死ぬ筈だった」
全員の顔が それぞれの気持ちを物語る。
「ミミハギ様 というのを聞いたことがあるか。
東流魂街七十六地区の 逆骨 に伝わる単眼異形の土着神だ。
自らの持つ眼以外の全てを捧げた者に 加護をもたらすと伝えられている。
そしてその神は はるか昔に天から落ちてきた 霊王の右腕を祀ったものだと伝えられている。
俺の父母は迷信深い人でな 医者に見放された俺を、すぐにミミハギ様の祠へ運ぶと 俺の肺を捧げる祈祷を行った。
お陰で俺は生き延びたよ。死神として瀞霊廷の為に働けるまでになった」
浮竹の口から 血液が吹き出す。
「!隊長!!」
「騒ぐな!!
……俺の肺にはミミハギ様の力が喰いついていた。
その力を 全身の臓腑へと拡げる儀式を神掛と言う。
今の俺の全ての臓腑は ミミハギ様のもの。
俺は全ての臓腑を捧げる事で ミミハギ様の依り代となった。
今の俺は 霊王の右腕そのものだ」
「浮竹隊長……まさか 最初からこのことを見越してその神掛を……」
ルキアが呟く。
「そうだ。俺は自分が生き延びた理由を知った時から いずれ来るこの日のことを考えていた。
一度拾ったこの命 護廷の為に死なば本望」
それは浮竹の絶叫とともに
腕が 空へと突き抜けた。