第325章 609."A"
ユーハバッハだったものが 黒に染められる。
「ユーハバッハ いや かつてユーハバッハだった者 よ。名を失うのはつらかろう。
哀れなおんしに わしが
名をつけてやろう」
その斬魄刀が 白に光る。
「真打 しら筆一文字
……最新式の言い方で言うなら 卍解ということになるんかのう。
なにしろ 世に卍解というもんが生まれるより昔 最初に生まれた進化した斬魄刀じゃ。
この刀は一文字で塗り潰されたものに 新たな名を刻み込むことができる。」
すると その黒で塗りつぶされた体に 白で文字が描かれた。
黒蟻
「ーーさて 気分はどうじゃ……かつてユーハバッハだった 黒蟻よ。
おんしの力は今 地面を這う黒蟻に等しい脆く儚い命となった」
「………こ……ここまで…………」
「そう、ここまでじゃ。
ここまで力の差があった。
そしておんしの命運もここまで。
今迄殺した死神達の命を抱いて
黒蟻の如くに 踏み潰されて死ぬがよい!」
巨大な足が ユーハバッハを踏み潰す。
「虫けら共の王よ さらば」
落ちていく黒蟻
それは 呟いた。
「………ここまでとは…
我が眼の瞑じた状態で よもやここまで見えているとは!!」
その直後 一兵衛の背後から凶悪なまでの霊圧が噴き出した。