第28章 こんなこと前もあったよね
『なんですかそのカメラ』
「一眼レフカメラ!病院で子どもでも大人でもこれで撮ってあげると喜ぶのよ!」
『…私物で?』
「えへ、買っちゃった」
彼女が稼いだお金で買い、それで満足しているならばいいだろうと苗字が小さく溜め息を吐く
隣りに立つ赤司に巻き込んでしまって申し訳ないと心の中で謝罪しながら、カメラを向けられ姿勢を正した
「じゃあ撮るわね」
そのまま赤司と苗字のツーショットに加え、小道具を使ったりソロショットを連写した彼女は画像を確認し、満足そうに笑う
「うん!満足!」
「じゃあ行こうか」
『そうね』
時間を確認すると思ったより時間がかかっていたようだが遅れたところで怒る人物はいないだろう
だとしても気持ちが焦り、下駄を履いて立ち上がろうとすると先に履き終えていた赤司が苗字に手を差し伸べていた
その手を取った苗字が立ち上がると後ろから「キュンキュンするぅ…」と小さい声が聞こえた気がしたが、気持ちがまだ若いのでしょうがないと声の持ち主の雪の方へ振り返る
『じゃあ行ってきます』
「征十郎君、名前ちゃんのことよろしくね」
「はい。転ばないよう気を付けておきます」
『下駄すっぽ抜けるかも』
「それは気を付けてくれ」
「ふふ、行ってらっしゃい」
『行ってきます。夕飯かお土産に何かいりますか?』
「今日は外で雨さんと花火見ながらご飯だから大丈夫!
征十郎君も、いってらっしゃい」
「はい。雪さんもお気をつけて」
昔と変わらずニコニコと手を振る彼女に手を振り返し、扉がパタンと閉まる
手を繋いだまま彼らは花火大会の会場へと向かい、近づくにつれて増える同じ格好をしている人物に心を躍らせていた