第24章 動物園
紙袋を閉じなおし、残る虹村に視線が集まった
目立つことに慣れていない虹村は少し嫌そうな顔をしながら、苗字に近づく
「あんま見るなよ大したもんじゃねぇんだから」
「虹村さんだって見てたじゃねぇか」
「…苗字ほらよ。チョコ美味かった」
『…ありがとうございます。なんですこれ、小さい割に重い』
「爪に塗るやつ」
『え、マニキュア!?虹村先輩が?!』
「似合うと思ったんだよワリィか」
『開けていいですか?』
「好きにしろ」
もう渡したものだから本人の好きにすればいいと虹村が言ってきたので丁寧にテープをはがし取り出すと、ベースコートとトップコート、綺麗なピンク色のポリッシュがセットになってラッピングされていた
確かに似合いそうな色だとマニキュアの向こう側にいる虹村を見ると、何とも言えない表情をしている
みんな一生懸命選んでくれたんだろうなと笑いながら手にかかっている紙袋を見て、また苗字が笑う
『みんなありがとう。わざわざ集まってくれると思わなかった』
「名前っちのためなら全然っスよ!」
「せっかくの春休みだもんね!」
『でもちょうどよかった。今日お土産買ったんだ
はいこれ動物園のクッキー、形いろいろあるから好きなの取っていって』
「オレネコがいい!ある?!」
『ない』
「何があるんですか?」
『パンダ、トラ、ライオン、ウサギ、カバ、クマ』
「どういう組み合わせなのだよ」
『製造会社に言って。早い者勝ちで』
「私ウサギがいいー!」
『さつきはそうだよね、はい。火神はトラね』
「…何でもいいけどよ」
みな適当にクッキーを取っていく
紫原には苗字からクマを渡していたが彼は普通に受けとりその場で食べていたが、おいおいさっき焼肉あれほど食べてたよな?と誰もがツッコまずにはいられない
しかしよく考えればいつものこと
そんな彼らはみんなで駅に向かって歩き出し、雑談を交わしながら一緒の電車に乗った