第16章 あなたと永遠に……11
謙信様の腕の中で先ほどまで与えられた熱を冷ましながら、頭の隅っこで不安に思っている事を口にするか、どうするか悩んでいた。
「かおる」
「はい?」
「言いたい事があるならはっきりと言うがよい」
謙信様の瞳は、探るように私を見つめてはいない。
この方は、わかっているんだ
私が口にしなくても、私の心の奥底まで見据える事が出来ている。
嘘なんか通用しない
「……いくさ……」
「いくさ?」
「始まるんですか?」
「近いうちに始まるであろうな」
遠くに想いを馳せるような謙信様の瞳には、私は映ってはいない。
それが心細くて、謙信様の着物をキュッと握りしめてしまう。
「かおるが案ずる事は何もない」
「でも……いくさが始まれば謙信様も?」
「今回は、信玄と伴に出陣する」
やっぱり……
行ってしまうんだ
「春日山城に戦火が広がる事はない。幸村と佐助がこの城を守る。かおるは安心して日々を過ごすがよい」
「……どうしても……いくさに行くんですか?」
「愚問だな……敵は織田信長だ」
初めて見る好戦的な謙信様に私はそれ以上、何も言えなかった
知識としてはわかっていたつもり
私がいる時代は戦国時代
誰もが天下統一を目指して群雄割拠している。
この時代で生きていくと決めたんだから、常にいくさが側にある事を自覚しないといけない……よね。