第16章 影山夢02
「こんのっ……ボゲェ!!!!」
響く影山くんの怒鳴り声。
怒鳴られた私はキーンとする耳を押さえる。
「そ、そんなに怒鳴らなくても……」
「怒鳴るに決まってんだろ!何で前見て歩かねぇんだよ!そんで何で毎回俺にぶつかってくんだよ!」
「そ、それはー…確かに私の不注意だけど……そんなに怒鳴って怒ることじゃないじゃん…!」
そう言い返すと眉間にシワを寄せて苛立った顔をしていた影山くんがフッと無表情になる。
…あ、やばい……と思った時には遅く、その顔のまま影山くんは私と影山くんの間にある物を指差した。
「……これを思いきり背中にぶつけられたことが…そんなに怒鳴ることじゃねぇ?」
これ、とはバレーボールのカゴのこと。
それも私が影山くんに当ててしまったのは角の部分で……多分、相当痛いと思う。
つい言い返してしまったけど、悪いのは確実に私だ。
謝ろうと口を開こうとしたらカゴを避けて影山くんが私に近付いた。
それから大きく息を吸って………
「怒鳴ることだボゲ柚季!!!いい加減そのドジどうにかしろ!!!!」
そう怒鳴った。
さっきよりももっと耳がキーンとして痛い。
「ご、ごめん、なさい…。」
「ほんとに悪いと思ってんのかよ!!気を付けろって毎回言ってんだろ?!」
「き、気を付けようとは思ってるんだけど……」
「思ってるだけじゃなくて気を付けろ!!!」
「は、はい…。」
あう、これはお小言コースに突入かもしれない……この声量で怒鳴られ続けたら耳がおかしくなりそうだなと思った私は奥の手を使うことにした。
ちらりと影山くんの様子を伺って、今だ!と動く。
「っ!!!」
影山くんの声が止まった。
奥の手、とは影山くんに抱きつくこと。
ぎゅうっと抱きつくと影山くんは顔を真っ赤にして何も言えなくなっちゃうから。
前につまづいて影山くんに抱きついてしまった時に怒られなくて、怒らせちゃった時に良いかもと心にとどめていた。
効果はあったみたいで、影山くんの顔は真っ赤だ。
「あの、ごめん、ね?ちゃんと気を付けるようにするから…。」
許してくれる?と聞くと
「…つ、次は、気を付けろよ……!」
なんて言いながら私を自分から剥がして影山くんは離れて行った。
「………いい加減、ほんとに気を付けなきゃなぁ…。」