第4章 磨斧作針ー３日目ー

「あはは…これじゃあ休めそうにないですね」

「ふふ、大丈夫です。これでこそ彼らですから」

「京香さん大丈夫ですか！」

「ありがとう、大丈夫。後でちゃんと病院行ってくるね」

武田先生と笑いあえば、心配そうに駆け寄ってきた夕君と翔陽君。安心させるように微笑めば、ニカッと眩しい笑顔を返してくれた。

保健室の外では一君に怒られている徹君の声。

少しして、また数人の足音が聞こえてきたので扉の方に視線を向ければ、大地君と孝支君。それに飛雄君がいた。

「あ、影山も結局来たのか。迷惑になんだろうが日向ボゲェ！とか言ってたクセにー」

「あ゛ぁ？うっせえ日向ボゲェ！心配だったんだよ！悪いかコラ！」

「ヒッ…そ、そんなに睨まなくても良いだろ！」

「京香さんとこに隠れてんじゃねぇ！」

忽ち始まってしまった翔陽君と飛雄君の言い合い。飛雄君の怖い顔にビクッとした翔陽君は私の後ろに隠れた。

あ、大地君が怒ってる。一足先に察した孝支君は大地君から離れている。流石高校時代を共に過ごしているだけはある。

「おいお前ら…」

「日向！影山！お前らいい加減にしろ！京香さんにこれ以上迷惑かけるつもりか？」

二人を止めようとした夕君の言葉虚しく、一君よりも大きな雷が落ち、ニコニコとしてる大地君は本当に怖かった。すぐに二人が大人しくなったのは言うまでもない。

「はぁ…お騒がせしてすみませんでした」

「う、ううん大丈夫。みんなありがとね」

「ほらそろそろ朝食の時間ですから、行きましょう。では京香さんまた後で」

「はい」

武田先生が事態を収拾してくれれば、翔陽君や夕君の背中を押して保健室から出て行く。それに続いて大地君と孝支君も。

「京香さんの元気な顔が見れて安心した。な、大地」

「あぁそうだな。良かったべ」

そう振り返って、安心したように笑ってくれたので私も笑顔を返して手を振った。

何だか嵐が去ったような疲労感。
再び睡魔に襲われれば、抗うこともなく誘われた。

武田先生が病院にと迎えにきてくれるまで、私は眠っていた。

こうして合宿４日目が始まったのである。